MEDICAL CARE診療紹介

肝胆膵・移植グループ

肝胆膵・移植グループの特色

 2024年4月に肝胆膵グループと移植グループが統合し、肝胆膵・移植グループとしてチーム一丸で肝胆膵疾患の治療に当たっています。
肝胆膵高度技能医4名、内視鏡技術認定医5名、移植認定医5名を擁し、質の高い医療を提供するとともに今後の日本の肝胆膵・移植医療をリードできる人材の育成につとめています       

肝胆膵手術について

 当科の肝切除数は年間約120例を数え、道内の多数の施設から切除困難例を受け入れております。疾患は肝切除を必要とする肝細胞癌 をはじめ、肝内胆管癌転移性肝癌などの肝悪性腫瘍、北海道に特異的な 肝エキノコックス症巨大肝血管腫などの外科的疾患の治療を行っています。 また近年では体への負担と傷の小さな腹腔鏡下肝切除ロボット支援下肝切除に特に力を 入れており、その割合が劇的に増加しています。

症例数推移

 北海道の肝胆膵外科のLeading Hospitalとして、重篤な心肺疾患、自己免疫疾患など特殊な併存症の管理や、通常の施設では切除不能とされてしまうような多発、巨大肝腫瘍、動脈・門脈などの血行再建を 伴う胆道癌膵臓癌等の肝胆膵手術など困難症例への拡大手術、化学療法からの Conversion、Two stage hepatectomyなど集学的治療としての手術にも積極的に取り組んでいます。

移植手術について

 当科では先代の藤堂教授がアメリカ・ピッツバーグ大学から赴任された1997年から肝不全に対する治療として肝移植術 (生体肝移植脳死肝移植)を行っています。 現状、日本の脳死臓器提供ドナーは肝不全の患者数に対しては 十分でないため、近親者のうちの健康な生体ドナーから肝臓の一部を移植する生体肝移植を十分な条件検討の上行っています。現在まで生体肝移植・脳死肝移植を合わせて300例以上施行しており、安定した成績を上げています。

 対象疾患は以下の通りです。

肝臓移植についての動画

移植後の生活についての動画

肝臓移植についてのパンフレット

患者の皆様へ

 肝細胞癌、肝内胆管癌、大腸癌の肝転移を含む肝臓領域の癌、また、胆管癌、膵癌をなどの胆膵領域の癌について切除が可能かどうかの判断は専門の外科医でなければ判断が困難な場合も多く、また、一般的には切除不能とされる癌でも、 術前放射線療法や化学療法を行うことにより、切除可能となる場合もあります。
 セカンドオピニオンを希望される方は、まず主治医に御相談していただき、診療情報提供書と画像検査などの資料を御準備のうえ、当科に紹介いただければ、 患者様にとって最良の治療を選択するお手伝いをさせていただきます。

 移植手術に関して分からないこと、知りたいことがあれば、遠慮なくお問い合わせください。担当医・レシピエント移植コーディネーターが対応させていただきます。 また、肝移植に関する資料も準備しておりますので、ご参考にしてください。

連絡先:移植コーディネーター事務室
TEL/011-706-7750 (平日9:00~17:00)

肝細胞癌

肝細胞癌は、肝臓にできる代表的ながんで、多くはB型・C型肝炎や脂肪肝炎、肝硬変などの慢性的な肝臓病が背景にあります。早期には症状が少なく、定期的な検査で見つかることが多いのが特徴です。治療は病気の進行度や肝臓の働き具合によって選ばれ、手術でがんを切除する「肝切除」や、肝臓を新しく入れ替える「肝移植」が根治を目指せる方法です。進行度によってはカテーテル治療や薬による治療も組み合わせ、安全性と治療効果のバランスを考えて最適な方針を選びます。

肝内胆管癌

肝内胆管癌は肝臓にできる悪性腫瘍である原発性肝癌の約4%を占める疾患です。肝内胆管癌は、肝臓の中を走る胆管(胆汁の通り道)から発生するがんです。治療の中心は手術で、がんを含む肝臓の一部を切除することで根治を目指します。外科的に完全切除できるかどうかが予後に直結するため、専門的な評価と治療戦略が大切です。

転移性肝癌

転移性肝癌は、肝臓そのものから発生するのではなく、大腸癌や胃癌など他の臓器のがんが血流を通じて肝臓に広がった状態を指します。肝臓は血流が豊富なため転移が起こりやすく、外科治療では「肝切除」によりがんを取り除くことが根治につながります。特に大腸癌からの転移では、全身の状態やがんの広がりを考慮したうえで切除が可能なら、長期生存が期待できます。切除が難しい場合は抗がん剤治療やカテーテル治療を組み合わせ、再手術を含めた集学的治療を行うことが重要です。

肝エキノコックス症

肝エキノコックスは、キツネや犬などを介して感染する寄生虫(包虫)が肝臓に巣を作り、長い年月をかけてゆっくり大きくなる病気です。初期は症状がほとんどなく、検診や画像検査で偶然見つかることが多いのが特徴です。放置すると肝臓の働きを妨げたり、他の臓器に広がることがあります。治療の第一選択は外科手術で、肝臓の病変を完全に切除することが根治につながります。進行例では切除が難しい場合もあり、内科的治療薬を併用しながら長期的に経過をみていく必要があります。

巨大肝血管腫

先天異常。血管増殖の結果,新生物に類似した腫瘤となったもので、海綿状血管腫(ループ状の毛細血管壁の拡張および肥厚により,血液の満ちた大きな腔をもつ血管拡張性の奇形性の腫瘍)といわれています。

腹腔鏡下肝切除術

腹腔鏡下肝切除は、おなかに小さな穴を数か所あけ、カメラと専用の器具を使って行う低侵襲手術です。開腹手術に比べて傷が小さく、痛みが少なく、回復が早いことが大きな利点です。特に肝臓の表面に近い部分や小さめの腫瘍では、安全性と有効性が確立されています。一方で、肝臓は出血しやすく構造が複雑なため、高度な技術と経験を要する手術です。症例によっては開腹手術やロボット支援手術の方が適している場合もあり、病状に応じて最適な方法を選択します。

ロボット支援下肝切除

ロボット支援下肝切除は、腹腔鏡手術の発展形として導入された新しい外科治療です。手術支援ロボット「daVinci」を用いることで、外科医が操作する鉗子が自由に曲がり、細かい動きが可能になります。さらに高精細な3D映像と手ぶれ防止機能により、繊細な肝臓の切離や血管の処理を安全に行える点が大きな利点です。従来の開腹手術に比べて傷が小さく、術後の回復が早いことも期待できます。一方で、すべての症例に適しているわけではなく、患者さんの病状や体格に応じて、腹腔鏡や開腹手術と比較しながら最適な方法を選びます。

胆道癌(胆管癌、胆嚢癌、十二指腸乳頭部癌)

胆道癌は、胆汁の通り道である胆管や胆のう、肝門部に発生するがんの総称です。進行すると黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、かゆみ、肝機能障害などを引き起こします。治療の中心は手術で、がんを含む胆管や肝臓の一部を切除し、必要に応じて胆管と腸をつなぎ直します。切除範囲が大きくなることも多く、高度な技術を必要とする手術です。進行して手術が難しい場合には、抗がん剤治療や胆道ドレナージ(胆汁を外に流す処置)を組み合わせ、症状を和らげながら治療を続けていきます。

膵癌

膵癌は膵臓にできる悪性腫瘍で、早期発見が難しく、進行してから見つかることが多い病気です。膵臓は胃や胆管、血管に囲まれているため、手術は非常に高度な技術を要します。根治を目指せる唯一の方法は外科的切除で、腫瘍の場所によって「膵頭十二指腸切除術」や「膵体尾部切除術」などを行います。手術後には再発予防のため抗がん剤治療を組み合わせることが一般的です。手術が難しい場合でも、化学療法や放射線治療を組み合わせることで症状の軽減や延命が期待できます。

生体肝移植

生体肝移植は、健康なご家族の肝臓の一部を提供していただき、それを患者さんに移植する治療法です。肝臓は再生能力が高く、提供者の肝臓も時間とともに元の大きさに近づきます。重い肝硬変や劇症肝炎、進行した肝臓の病気などで肝機能が回復しない場合に、命を救う唯一の方法となります。手術は提供者と受ける患者さん双方に大きな手術となるため、安全性を最優先に専門チームで慎重に評価し、適応を判断します。移植後は拒絶反応を防ぐ薬を使いながら、長期的な管理を続けていきます。

脳死肝移植

脳死肝移植は、脳死と判定された方からご提供いただいた肝臓を用いる移植です。肝硬変や劇症肝炎などで肝臓が回復できない場合、命を救う唯一の根治的治療となります。しかし日本では臓器提供の数が限られており、移植を希望して待機している患者さんが非常に多いのが現実です。移植を受けられるかどうかは順番や適合条件に左右され、残念ながら全ての方に肝臓が行き渡るわけではありません。移植後は拒絶反応や感染を防ぐための薬を使いながら、専門チームによる長期的な管理を続けていきます。

急性肝不全

急性肝不全は、健康だった肝臓が短期間で急激に働きを失い、命に関わる状態になる病気です。原因は薬剤、ウイルス感染(劇症肝炎)、自己免疫性疾患などさまざまですが、進行が早いため早期の集中治療が欠かせません。軽症であれば肝臓の回復を待ちながら内科的治療を行いますが、重症例では生体肝移植や脳死肝移植といった外科的治療が唯一の救命手段となります。特に移植が必要かどうかは時間との勝負であり、専門施設での迅速な評価と治療が極めて重要です。

非代償性肝硬変

肝硬変が進行すると、肝臓の働きを保てなくなり「非代償性肝硬変」と呼ばれる段階になります。黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、腹水(お腹に水がたまる)、食道・胃の静脈瘤からの出血、意識障害(肝性脳症)などが現れ、生活に大きな影響を及ぼします。内科的治療で症状を抑えることは可能ですが、根本的に病気を治すことはできません。状態が進むと、肝移植が唯一の根治的治療となります。移植の適応を含め、早い段階で専門医療機関に相談することがとても大切です。

原発性胆汁性胆管炎(PBC)

原発性胆汁性胆管炎は、自己免疫の異常によって肝臓の中の細い胆管が壊され、胆汁の流れが悪くなる病気です。進行すると肝臓に障害が広がり、肝硬変や肝不全につながることがあります。初期には無症状のことも多いですが、かゆみや倦怠感、黄疸などが出てくる場合があります。内科的にはウルソデオキシコール酸などの薬で進行を抑えることが可能ですが、治療効果が不十分な場合や進行例では肝移植が根治的治療となります。外科的には、肝移植の適応を適切な時期に見極めることが重要です。

原発性硬化性胆管炎(PSC)

原発性硬化性胆管炎は、肝臓内外の胆管に慢性的な炎症と線維化(硬くなる変化)が起こり、胆汁の流れが妨げられる病気です。進行すると黄疸、かゆみ、倦怠感、胆管炎の反復などがみられ、やがて肝硬変や肝不全へ進展することがあります。現時点では病気そのものを治す薬はなく、内科的治療で症状を抑えつつ経過をみることが中心です。進行して肝機能が保てなくなった場合、肝移植が唯一の根治的治療法となります。外科的には、適切な時期に移植へつなぐ判断が極めて重要です。

胆道閉鎖症

胆道閉鎖症は、生まれつき胆汁の通り道(胆管)がふさがっている病気で、乳児期に黄疸や便の色が白っぽくなることで気づかれます。胆汁が流れないまま放置すると肝臓に障害が進み、命に関わるため、早期の外科治療が必要です。
治療の第一歩は「葛西手術(肝門部腸吻合術)」で、肝臓と腸を直接つなぎ、胆汁の流れを確保します。多くの場合、これにより黄疸が改善し成長が可能となりますが、長期的には肝硬変が進むケースもあります。そのため、成長後や症状が悪化したときには「肝移植」が根治的治療として必要になることがあります。葛西手術と肝移植は、胆道閉鎖症の治療において互いに補い合う重要な役割を担っています。

その他の代謝性疾患

先天的に肝臓の働きに関わる酵素や代謝の異常を持つ病気の一部は、進行すると肝臓の機能を保てなくなり、肝移植が必要になることがあります。代表的なものに以下があります。
ウィルソン病:銅が体にたまり、肝障害や神経症状を引き起こす病気。薬での治療が効かない進行例では肝移植が根治的治療となります。
シトルリン血症:尿素回路の異常によりアンモニアが体に蓄積し、意識障害などをきたす病気。重症例では肝移植により代謝異常を根本的に改善できます。
糖原病(特にⅠ型など):肝臓に糖をため込みエネルギー利用ができなくなる病気。肝移植で代謝が正常化し、生活の質が改善されます。
その他の先天性代謝異常(チロシン血症、α1-アンチトリプシン欠損症など):薬でコントロールできない場合や肝不全に進展した場合、肝移植が唯一の根治的治療となります。
これらの疾患では、薬物治療や食事療法で経過をみながら、移植が必要となる時期を適切に見極めることが重要です。

肝臓移植について
(急性肝不全)

肝臓移植について(急性肝不全)

肝臓移植について
(慢性肝不全)

肝臓移植について(慢性肝不全)

はじめに

はじめに

移植後の生活

移植後の生活

薬について

薬について

終わりに

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