幾多の改変を経た臨床研修医制度により、現在では外科研修は必須ではなくなりました。そんな時代において、初期研修医達は何を求めて当教室を回ってくるのだろうか。我々消化器外科I教室ではローテートで回ってくる初期研修医達に一体何を教え、身につけさせることができるだろうか。その答えは、藤堂省・前教授時代に築き上げた米国ピッツバーグ大学式と日本式研修制度が融合した独自の研修体制に、武冨紹信・現教授体制によりさらなる発展を遂げた教育体制が答えてくれるものと信じています。
初期研修医は1~2ヶ月しか当教室を回りません。この短期間に我々が伝えたいことは、以下の3つのことです。
我々が初期研修医に一番伝えたいことは、『目の前にある一例一例の患者様に対して、常に真摯に向き合い、全力であれ』ということです。手術や周術期管理はもちろんの事、『なぜその治療を行うのがベストなのか?』『もっと他によい方法は本当にないのか?』『今よりもよくするためには自分達に何ができるか?』を常に考える習慣を身につけてもらうことです。日々進歩・発展する医学において、日々の研鑽なくしては遅れをとるばかりです。こうした考え方を、日々の診療に加え、術前カンファレンス、Mortality&Morbidityカンファレンス、Journal Clubなどの朝のカンファレンスを通して自然に身につけてもらうようにしています。
また、わずか1~2ヶ月でも、我々の一例一例に対して全力を尽くしている姿勢・熱意もきっと伝わるはずです。それが今後のあなたの長い医師人生に活かされることを願っています。
もう一つ心がけているのは、外科医にとって大事な技術の基礎をこの時期にしっかりと身につけてもらうことです。当たり前のことですが、縫合結紮などの基本手技をしっかりできずに大きな手術ができるようにはなりません。基本手技は、正しいやり方を教わること、それを継続させることがとても重要です。そのため、私たちは学生、初期研修医、専攻医が皆で楽しく学べる環境作りに重点を置いています。近年では、消化器外科手術は腹腔鏡下手術全盛時代です。我々は独自の鏡視下手術教育プログラムを作成し、今後腹腔鏡手術を担っていくであろう若者達の育成にも力を入れています。ここでも大事にしているコンセプトは、若いうちにしっかりとした基礎作りをさせることです。小さな事からコツコツと、確実に一段一段上っていけるようにサポートしたいと思います。
基礎が大事なのは、何も技術だけではありません。近年ではプレゼンテーション能力は様々な分野で求められています。プレゼンが上手=自分の考え・意見を簡潔に相手に伝えることが上手であるといえます。相手、とは、指導医、同僚、研修医、学生かもしれませんし、コメディカルの方々、あるいは患者様、と時と場合により様々です。このプレゼンは、練習あるいは鍛錬なくしては鍛えることができません。意識していないと自己満足的なプレゼンになりかねません。相手の立場に合わせ、なおかつどれだけ相手にわかって欲しいと強く思えるかで相手の理解度は全然変わってきます。日々の術前プレゼンや教授回診でのプレゼン、学会発表、論文発表などを通じて、情熱を伝えるプレゼン能力を身につけてもらえるような指導を心がけています。
当教室では、年次に合わせた後期臨床研修プログラムを設定しております。詳細は当教室のホームページをご参照下さい。基本的には入局後の1年間は、初期研修の内容に関わらず大学病棟で研修してもらいます。上記内容を中心にしっかりとした外科医の基礎を築いてもらいます。
基本的には日本外科学会専門医取得を第一に考えています。その他の資格は、後期臨床研修プログラム以降での取得を目指します。