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第26回北海道肝癌治療研究会がニューオータニイン札幌の現地開催+webのハイブリッド形式で開催されました。

2023/10/11

お知らせ

2023年10月7日,第26回北海道肝癌治療研究会がニューオータニイン札幌の現地開催+webのハイブリッド形式で開催されました。
前半はセッション1・2で2席ずつ,北海道の拠点病院の先生方に肝癌治療の取り組みについてご発表がありました。セッション1では名寄市立総合病院副院長 鈴木康秋先生座長のもと,第1席は手稲渓仁会病院 清水孝夫先生から新規MWA治療についてのお話しがありました。マイクロ波を用いるMWAはRFAと比較して短時間に広い範囲の凝固が可能であるため従来よりもサイズの大きい肝腫瘤が治療対象になりうるという事や, RFAとは異なるデバイスの特性などにも留意した治療の必要性などをお話し頂きました。第2席の旭川医科大学 髙橋裕之先生からは,胆管腫瘍栓を伴う肝癌の術後再発時の治療のため,胆道再建を回避し腫瘍栓摘除を選択した場合の,胆管狭窄への対処としての術中胆管ステント留置について手術ビデオを用いながらお話しを頂きました。
セッション2では市立函館病院消化器内科 山本義也先生座長のもと,札幌厚生病院 推井大雄先生からLen-TACE治療のお話しがありました.短期間のLenvatinib投与を併用しTACEを行うプロトコールに準じた治療経験についてご発表いただきました。Lenvatinib併用によって腫瘍血管のnormalizationと術後VEGF発現抑制が期待される一方で,有害事象により症例に応じて治療スケジュールの変更の必要性などの課題についても言及されました。第2席は当科 志智俊介先生より,肝内胆管癌症例のリンパ節郭清の臨床的意義についてご発表頂きました.近年では治療的な意義は薄いとされていますが,当科肝Gでこれまで行ってきた術前リンパ節転移評価と郭清〜病理診断による正診率を背景とし,患者予後の層別化に寄与しうる診断的な意義について言及されていました。
後半は特別講演として,当科 柿坂達彦先生に座長の労をお取り頂き,島根大学医学部 消化器・総合外科学講座教授 日髙匡章先生より肝癌治療の現状や集学的治療についてご講演頂きました。 Len-TACE治療のご経験,薬物療法後の病勢の変化と手術,肝移植に踏み切る際の悩ましい線引き等のお話しに加え,進行症例に対するatezolizumab+bevacizumab療法との比較,ご自身が関わった治験などについて,長崎大学に在籍されていた際の豊富な症例をまじえてお話しを頂きました.また肝癌治療は関連科・部署が広く関与するため,内科外科間の現状の見解の違い,集学的治療のための横断的なカンファレンスの重要性などについても言及され,肝癌治療について幅広く網羅できる大変貴重な内容でした.個人的には薬物療法,初回根治手術,再発後治療などの一連のお話しが,standardな治療を理解する上で非常に勉強になりました。
今回の研究会を振り返りますと,前後半のご講演・質疑を通して現在の肝癌に対する標準治療やcutting-edgeな領域も含めた集学的治療まで俯瞰できる約2時間半に濃縮された充実した内容であったと思います。遠方よりお越しいただき貴重なお話しを頂きました日髙先生,治療の最前線でのご経験をお話し頂きました清水先生,髙橋先生,推井先生,志智先生,ご参加下さいました皆様に心より御礼申し上げます。
(文責:奥村一慶)

  

 

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